みなさんこんにちは。CMB日本語教師養成講座、広報担当・野丸です。現役の日本語教師やこれから日本語教師を目指す方は気になっているであろう、「公認日本語教師」。そもそも、なぜ今国家資格化なのか。先日開かれました【日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議(第5回)】の議論内容(私の理解できた範囲ではありますが)も踏まえまして、お伝えできればと思います。
令和2年3月に出された「日本語教師の資格の在り方について(報告)」には、「日本語教師の資格制度創設の目的」としてこのような記載がしてあります。
日本語教師の資格創設は,外国人等(※)に日本語を教える日本語教師の資質・能力を確認し証明するための資格を定めて,日本語教師の質の向上及びその確保を図り,もって国内外の日本語教育を一層推進し,多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現,諸外国との交流の促進及び友好関係の維持発展に寄与することを目的とする。
ううむ、わかるような、わからないような。
直接的に数の確保につながるかどうか、個人的には懐疑的なところもあるのですが、現状統計的に把握できるのは法務省告示校で働く日本語教師。そう、あくまで「働いている人」です。資格化していないため、何人その有資格者がいるかも厳密には把握できず、対象者数を厳密には把握できないので、実際足りないのか、過剰なのかもよくわからない(現場の感覚はあるにせよ)のが現状。しっかりと数をチェックして、対象となる有資格者のコントロールをしやすくするというところは、見込めるところでしょうか。ただ、数が増えることになぜ懐疑的かと申しますと、国家資格にすることで試験や実習が課せられるのであれば、これまでより確実にハードルはあがりますので、有資格者の地位向上・待遇改善など、国家資格取得のメリットがないと実質的に数は増えてこない気がします。現場で働くものとしては、とにかく現場が混乱しないように、また、学習者のために、要件を満たさなくても「いい先生」はずっと教壇に立っていただけるような制度設計をお願いしたいものです。
現在法務省告示校に勤務する要件(以下、勤務要件)については、それぞれの機関が以下のような基準で修了や合格の認定を行っています。
勤務要件 | 認定機関 | 認定基準 |
①大学で主専攻または副専攻 | 大学 | 各科目の認定基準+卒業認定基準 |
②学士+420時間養成講座修了 | 大学及び養成講座 | 大学の卒業認定基準 養成講座修了要件 |
③日本語教育能力検定試験合格 | 日本国際教育支援協会 | 検定試験合格(7割程度) |
とくに③は、極端な話、実習をしたことがなくても合格できますので、統一的な規格を作って、資格としての質のばらつきを正しましょう、という趣旨です。
いちばんメインの目的がこれ。日本語教育を担う有為な人材を多く輩出するためです。そのために、しっかりとした統一的な制度のもと、国が管理をしていくということ。また、有資格者の配置要件をもうけることで、日本語教育機関それぞれの教育の質を保っていこうという狙いもあります。
ということで、現在文化庁の有識者会議で議論が進んでおります。この会議の趣旨は、
文化審議会国語分科会が令和2年3月に取りまとめた「日本語教師の資格の在り方について(報告)」では,日本語教師のキャリアパスの一環として,日本語教師の資格制度を整えることにより優れた日本語教師を養成・確保して,我が国の日本語教育の質を向上させることが提言された。今後,この報告で提言された資格制度の枠組みに加え,制度の実施に関連する事項の詳細についての検討が必要である。また,資格創設については,日本語教師の業の範囲等を明確にするため,日本語教育の推進に関する法律附則第2条における「日本語教育機関」の範囲や評価制度についても併せて検討を行う必要がある。
このため,日本語教師の資格制度及び日本語教育機関の類型化の詳細について検討するための調査研究協力者会議を設置する。(文化庁ホームページより抜粋)
というものです。本講座のように文化庁届出受理講座についても、国家資格化はとても密接に関係してきますので、この会議については文化庁の方から毎回ご案内を頂き、傍聴しています。そこで、今回傍聴した4月27日の会議について大まかなレポートをしたいと思います(細かすぎて伝わりづらいことは、一旦割愛します)。
これはあんまり日本語学校には関係ありませんが、簡単に言うと、今まで大学の日本語別科は、大学の機関でありながら、文科省の監査の対象外(初耳でしたが驚きでした)だったため、某大学のような「行方不明〇百人」というひどいところが野放しだったという反省から、今回の会議の議題にも上がっているようです。きっと大多数(というか件の学校以外)はきちっと本来の目的に則って別科生を受け入れていただろうに、迷惑なお話しですよね。本来はまずは大学の監査の中にいれてちゃんと管理していきましょう、というな方向性になっていました。
法務省告示校(いわゆる留学ビザが取得できる日本語学校)は法務省告示基準+文科省の基準に基づいて作られています。今回の会議の趣旨として「日本語教師や日本語教育の質」をしっかり担保する、という目的から、あらたに二つ、審査項目を追加しませんか、という議論。1つめは、告示基準に加えて、第三者機関による定期的な審査をしませんか?ということ。現在の日本語学校は、設立時にチェックを受けた後は、毎年各自告示基準を満たしているかどうかを自己チェックして、その情報公開をおこなうことになっています。ただ、これはあくまで各教育機関の自己点検ですので、「質を担保する」という意味では第三者のチェックを受けるほうがいいよね!という方向の話になっていました。二つ目は、今回我々が一番注目している「公認日本語教師」を一定数配置することを課しませんか?ということ。日本語教育の質=日本語教師の質というのは当然のことなので、これはあらたなルールになるのは納得。もちろんすべて「十分な」移行期間を設けて混乱を防ぐことは度々確認されていました。
これが現役の日本語教師としては今日一番聞きたかったことです。これまで漠然と、「現制度での資格は国家資格化後も生きる」という感じでしか認識していませんでしたが、今日の会議を傍聴して明確にわかったことは、「現行の資格で働く日本語教師はそのまま働けます」としつつ、でも「国家資格をとるなら指定の試験に合格してください」という話になっていることが分かりました。
ではなぜ国家資格は試験必須か、といいますと、「国家資格化するのに、試験を免除してしまうとそもそも「質の担保」ができない」ということです。確かにキャリアカウンセラーや社会福祉士など他の国家資格については試験は一部免除などの措置にとどまっています。国家資格化する大きな目的として「質の確保」をあげているわけで、ある意味当たり前かもしれません。会議に参加する先生方も「自分が受かるか心配」と苦笑いされていましたが、私も試験を受けるつもりで学び続けなければいけないなあと、少しでも楽をしたがる自分を反省。ちなみに国家資格の取得要件になるであろう実習については、現役教師の方については免除してもいいのではという意見が大勢でした。
この関係者会議メンバーの中にはいろいろな方がいて、それぞれ現場の状況をよくよくご存じの方々です。真面目にルールを守って頑張っている日本語学校や関係諸団体が困らないように予算措置や移行期間のことなど、細々と意見されていて、少し安心しました。こういった「よくわかっている」方々の意見がしっかりと新制度に反映されていくことで、現場での混乱が最小限にとどめられることを一関係者として祈るのみです。
いま、文化庁の方で制度の準備がすすんでいますが、これはあくまで「議論」の段階で、まだ何も「決まった」とはいえませんが、ただ、現在の方向性としては、
①現役の日本語教師も国家資格を取るためには何らかの試験の合格が必要になりそう
②法務省告示校には一定数「公認日本語教師」有資格者の配置が必要になりそう
③現在の要件で働いている先生は当面そのまま継続可能だが、学校の状況によっては国家資格の取得が必要になることがありそう
今後もこの会議で議論が続くと思いますが、我々の仕事に密接に関係することですので、注視していきたいと思います。次回までにもう少しこれまでの経緯も勉強して、もっと整理してお伝えできるようにしていきたいと思います。きょうは特にまとまりませんが、そんな文章を最後まで読んでいただいてありがとうございます。それでは、また。
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